コラム

弱い識別性を有する商標の登録と保護に関する研究(二)

一、識別性の弱い商標の審査・審理と司法保護の現状

(二)識別性を得るための判断基準が統一されていない
 固有の識別性を欠く、または識別性が弱い標章について、裁判所はその識別性獲得の有無に関する基準について異なる見解を持ち、統一された判定基準が形成されていない。弱い識別性を持つ、または固有の識別性を欠く商標の識別性獲得基準に関して、中国の商標実務では「密接な関連性」「特定の関連性」「対応関係」「安定的な関連性」「関連性の確立」「唯一の対応関係」など、さまざまな表現が用いられてきた。また、排他的でない対応関係と唯一の対応関係という基準が形成されている。

1、排他的でない対応関係と唯一の対応関係
 「西安小肥羊烤肉店と国家工商行政管理総局商標審査委員会との商標行政紛争事件」において、二審裁判所は、係争商標中の「小肥羊」という文字について、一定程度「羊肉のしゃぶしゃぶ」という飲食サービス業界における内容や特徴を表すものであり、商標として本来的な顕著性を欠くものであると認定した。
 
 しかしながら、内モンゴル小肥羊公司は2001年7月の設立以降、フランチャイズチェーンの経営方式を採用し、サービスの規模と提供範囲を急速に拡大させた。
 同社は2001年度には中国飲食業百強企業に選出され、さらに2002年度には同ランキングで第2位にランクインするなど、急成長を遂げた。
 
 その結果、第3043421号商標が2003年に審査公告された時点において、「小肥羊」は全国的に高い知名度を獲得していた。
 これにより、「小肥羊」という識別標識は内モンゴル小肥羊公司と密接に関連づけられるようになり、サービスの出所を示す機能を果たすに至ったと裁判所は判断した。
 
 したがって、「小肥羊」という文字標識は、内モンゴル小肥羊公司による大規模な使用と宣伝を通じて、顕著性を獲得し、識別が容易となった。以上を踏まえて、商標登録が認められるべきであるとした。
 
 本件において、北京市高級人民法院は「密接な関連」という表現を用いて商標の獲得された顕著性を確認し、商標権者の独占状況を強調しなかった。同時に、事実陳述部分において、西安小肥羊烤肉館による「小肥羊」商標の使用は、形式、規模、範囲のいずれにおいても比較的限定的であり、公衆や内モンゴル小肥羊公司が認識し得る一定の影響をまだ生み出しておらず、係争商標の非唯一対応性も一定程度認めていた。

 「農夫山泉股份有限公司と国家工商行政管理総局商標審査委員会とのその他の行政紛争事件」において、農夫山泉公司は、出願商標がその使用により高い知名度を獲得し、この公司との対応関係を確立したことで、顕著性を獲得したと主張した。北京知的財産法院は、農夫山泉公司が本件で提出した証拠に基づき、農夫山泉公司が新鮮な果物、新鮮な柑橘類、新鮮なミカンなどの商品において、出願商標を大量かつ広範に宣伝に使用しており、この使用を通じて、出願商標は前記商品において高い知名度を獲得し、農夫山泉公司との間に安定的な関連性を確立したと認定した。したがって、出願商標は農夫山泉公司による使用を通じて顕著性を獲得し、関連公衆による識別が容易であるため、商標登録が可能であるとした。
 
 「姚洪軍、国家工商行政管理総局商標審査委員会の商標行政管理(商標)再審審査と審判監督行政再審事件」において、係争商標に関して、最高人民法院は、2001年商標法第11条第1項に規定される標識の使用者が前記標識を商標として長期間使用し、かつその使用がある程度の規模に達した場合、関連公衆が当該標識によって商品またはサービスの出所を識別できるのであれば、当該標識は公共の領域から区分され、それによって顕著な特徴を備えることになるとした。当該標識とその使用される商品またはサービスとの間に安定的な関連性が形成されたかどうかについては、標識の使用方式、使用範囲、持続時間および使用効果などの関連証拠に基づいて認定する必要がある。これら二つの事件は、いずれも「安定的な関連性」によって対応関係の程度を示しており、同様に関連市場主体が係争商標を商標として使用していないことを証明するものではない。後者の事件では、最高人民法院は、具体的な事件の判断において、標識と使用者との間に唯一の対応性がないという理由だけで、標識と商品またはサービスとの間に既に安定的な関連性が形成されていることを否定することはできないと直接指摘しており、「安定的な関連性」が絶対的な排他性を持つわけではなく、少なくとも概念的意味において「唯一の対応関係」よりも広いものであることがわかる。
 
 「常州開古茶葉食品有限公司と国家知識産権局とのその他一審行政事件」において、裁判所は、係争商標中の「小罐茶」が直接的に当該商品の主要原料、製品包装の特徴などを表示しており、商標登録として固有の顕著性を欠き、本来なら商標法第11条第1項第2号に規定される商標登録できない情形に符合するとした。しかし、第三者が提出した販売契約およびインボイス、受賞歴、広告宣伝契約、メディア報道、市場調査報告、広告監査報告などの資料、および複数の民事判決において認定された事実状況を総合考慮すると、係争商標が関連公衆において既に高い知名度を獲得し、第三者との対応関係を形成し、使用を通じて商標登録可能な顕著性を取得し、商品の出所を区別する役割を果たし得ると認定できるとした。したがって、係争商標は使用を通じて登録可能な顕著性を取得したとした。
 
 別の「阿里巴巴集団控股有限公司と国家知識産権局との二審行政事件」において、北京市高級人民法院も同様に「対応関係」という表現を採用し、裁判所は、係争商標の標識自体が顕著な特徴を欠き、阿里巴巴公司が本件で提出した証拠は、係争商標が指定された審判服務において使用を通じて高い知名度を獲得し、それと対応関係を形成し、関連公衆がサービスの出所を表示する標識として識別できるようにし、顕著な特徴を獲得したことを証明するには不十分であると判断した。「密接な関連」「安定的な関連性」と比較して、「対応関係」は明らかにより広い意味を持ち、他の事実認定の根拠や「対応関係」に関するさらなる説明や解釈がなければ、商標使用者と商標指向の唯一性を伝えることはできない。
 
 総括すると、このような識別力が弱い標章は、知名度証拠によって登録できる可能性があるが、極めて識別力の弱いものは大量な証拠を提出しても登録が難しいのが現状である。

出典:「知財財経」
日付
:2025年6月5日
URL:https://mp.weixin.qq.com/s/d4cSocrXaUWmCzPoOHBqpA

編集・翻訳者情報
担当:IP FORWARD法律特許事務所
中国商標代理人 戴 元

戴 元/Dai Yuan

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