コラム

中国コンテンツ市場コラム‐第7回 中国IP市場不況期突入?稼ぎ続けている稀有な成功事例とは

インフラ化したポップアップと、急拡大の裏で忍び寄る「効率低下」

エンタメ・IP業界メディアの雷報(レイバオ)が集計したデータによると、夏休み期間中に中国の主要9都市(北京・上海・広州・深圳・杭州・成都・重慶・南京・武漢)で開催されたIPポップアップイベントは342件にのぼった。中でも上海だけで135件を占め、IPポップアップストアは今や都市の商業施設において欠かせないインフラになりつつあることがわかる。

では、収益面では、どのような成果を上げているのだろうか。

例えば、6月25日から8月30日にかけて上海の商業施設・静安大悦城で開催された「閃耀!次元盛典3.0」では、全国初開催となる30件以上のIPポップアップストアが集結し、50以上のIPが展開された。期間中のポップアップ全体による売上高は7,300万元(17.17億円)を超え、施設内の二次元関連業態の総売上高は1.63億元(38.34億円)に達した。このうち4店舗のポップアップストアが500万元(1.18億円)を超える売上を記録した。

 特に注目を集めた「HUNTER×HUNTER REUNION限定テーマポップアップ」は、オープン初日だけで売上高が270万元(0.64億円)を突破し、これまで「ちいかわ」が保持していた商業施設におけるIPポップアップストアの1日売上高記録を更新した。

では、この実績は何を意味するのか。過去の数字と見比べてみよう。

2024年の第1回「閃耀!次元盛典」では、IPポップアップストアはわずか14件だったが、8,000万元(18.82億円)の売上を創出している。1店舗あたりの平均売上高は約571万元(1.34億円)となり、今年の2倍以上に相当する。また、売上高500万元(1.18億円)を超えた店舗は8件、そのうち2件は1,000万元(2.35億円)を突破していた。

続く2025年の「閃耀!次元盛典2.0(6月下旬~8月末)」では、店舗数が30件に拡大し、ポップアップストア全体の売上高は8,800万元(20.70億円)を超え、二次元関連業態の売上高は1.71億元(40.22億円)へと成長した。

しかし、今年(3.0)はポップアップストアの数が増え、すべて「全国初開催」であったにもかかわらず、売上高は1,500万元(3.53億円)減少し、前年比17%減に落ち込んだ。館内の二次元関連業態の売上高も前年比5%減少となっていいる。市場全体の規模は依然として大きいものの、明らかに商品が売れにくくなり、利益を上げることが難しくなっていることがわかる。

過剰供給と消費低迷:厳しさを増す中国IPライセンス市場

収益環境が厳しくなっているのは、IPポップアップストアだけではない。上流のIP権利者について見ると、雷報がこれまで集計した41社の上場企業およびその子会社の上期業績のうち、IPライセンス関連企業14社のうち、少なくとも9社で売上高が前年同期比で減少している。

例えば、アニメIPでは、「熊出没」を保有する方特動漫の2026年上半期売上高は3.12億元(73.38億円)で、前年同期比5.7%減少した。ただし、同社の売上の大部分はアニメ制作および配信によるものであり、華強方特の2025年年次報告書によれば、同年のキャラクターライセンス収入は2,391.8万元(5.63億円)と予想されている。

「喜羊羊与灰太狼」を保有する原創動力の上期売上高は3,900万元(9.17億円)で、前年同期比15.2%減少した。また、親会社である奥飛娯楽の決算によると、上半期の「使用権譲渡」、すなわちライセンス収入は3,097.5万元(7.29億円)で、前年同期の3,794.0万元(8.93億円)から18.4%減少した。

「精霊夢葉羅麗(中国の3DCGドールアニメ)」を保有する精英動漫の上期売上高は1,184.8万元(2.79億円)で、前年同期比70.4%の大幅減となった。さらに、非経常損益を除いた純損失は1,816万元(4.27億円)に達し、前年同期と比較して赤字幅が81.9%拡大した。卡游(Kayou)と提携した「葉羅麗」カードが大ヒットした2024年には、精英動漫の年間売上高は1.54億元(36.22億円)に達していた。そのうち「顧客1社(卡游と思われる)」からの売上高が7,500万元(17.64億円)を超え、全体の約50%を占めていた。しかし、その後、主要クリエイターの離職、アニメ第11シーズンの低評価、さらに卡游のカード事業全体の売上減少が重なり、精英動漫の収益は急速に落ち込んだ。2025年通期では、「顧客1社」からの売上高が77.6%減少し、1,683.7万元(3.96億円)となった。 今年上期には、この状況がさらに悪化したとみられる。

 CGアニメ『秦時明月』『天行九歌』『武庚紀』などを手掛ける玄机科技は、上期の総売上高および純利益こそ増加したものの、派生商品販売事業の売上高は47.7%減少し、337.8万元(0.79億円)となった。また、デジタルコンテンツ制作・ライセンス事業は1.97%の増加にとどまり、売上規模も比較的小さく、677万元(1.59億円)だった。

日本IPも前年同期で4割減、過剰供給×日中関係悪化のダブルパンチ

海外IPの一部も同様に厳しい状況となっている。例えば、『呪術廻戦』『ハイキュー!!』『ブルーロック』『銀魂』『BLEACH』などの著名海外IPを保有する羚邦集団では、下半期(2025年10月~2026年3月)のブランド再ライセンス収入が7,926.3万香港ドル(15.93億円)となり、前年同期比38.9%減少した。『カードキャプターさくら』『中華一番!』などのIPを保有する杰外動漫(JY Animation)はさらに厳しく、上期売上高は3,598.1万元(8.46億円)で前年同期比45.4%減少、非経常損益を除いた純利益は178万元(0.42億円)で79.6%減少した。同社の主要2事業のうち、映像ライセンス収入は44.6%減少し、商品化ライセンス収入は61.1%減少して、わずか456.69万元(1.07億円)となった。

業績悪化には複数の要因がある。マクロ面では、政治的要因に対するセンシティビティや国内消費市場全体の低迷が挙げられる。ミクロ・中間的な市場環境では、過去2年間に異なる分野が相次いで急成長した結果、中国国内のIP消費市場は需給過剰の段階に入ったとされる。さらに個々のIPについては、流行のピークを過ぎたこと、若年層への訴求力が低下したこと、短期間で発表された新作の評価が低迷したことなど、さまざまな問題が存在する。現在のIP消費市場では、単一あるいは大量のIPリソースを保有しているだけでは、企業の安定的な収益を保証できなくなっている。特に中堅・中小規模のIP権利者や代理店にとっては、川下市場における販売の不確実性が継続的に高まっており、ブランド企業はより低い最低保証金(MG)による協業方式を選択する傾向が強まっている。

これは、IP権利者にとって収益の確実性が低下することを意味する。上流のIP権利者が最低保証金を受け取るだけで安定的に収益を得る時代は、終わりを迎えつつある。今後、IP側はより積極的かつ深く、IP運営、商品開発、販売チャネルへの展開、マーケティング・プロモーションなどに関与し、パートナー企業と協力して市場全体のパイを拡大することで、相応の収益を獲得していく必要がある。

アニメIPだけでなく、その他のIP分野でも、多くの企業が大きな下押し圧力に直面している。例えば、「周同学(TikTokなどで大人気の中国人ダンスクリエイター)」「刘教练(カリスマフィットネストレーナー)」などのスターIPを保有する巨星伝奇では、上期のIP創出・運営事業の売上高が8,132.9万元(19.13億円)となり、前年同期比43.4%減少した。事業営業利益は2,426.8万元(5.71億円)で、前年同期比56.2%減少した。ただし、売上減少の主因は、バラエティ番組『周遊記』シリーズの制作収入が減少したことによるものだった。実際には、スターIPの管理、IPおよび関連商品の販売については好調であり、前者は125.9%増の4,246.5万元(9.99億円)、後者は329.5%増の2,770.6万元(6.52億円)となった。

 一方、「B.Duck」で知られる小黄鴨德盈は、より厳しい状況にある。上期売上高は約6,174万元(14.52億円)で前年同期比12.3%減少し、調整後純損失は約1,634万元(3.84億円)となり、前年同期比で赤字額が121.7%拡大した。継続的な赤字を受け、小黄鴨德盈は潮玩ブランド「HIDDEN WOOO」の買収を中止する公告を発表した。買収中止後、各当事者の権利・義務は、前年に買収契約を締結する前の状態に戻ることとなり、小黄鴨側は引き続きHIDDEN WOOOの20%の株式を保有する。小黄鴨德盈の2大コア事業を見ると、キャラクターライセンス収入は2,625万元(6.17億円)、ECその他の収入は3,549万元(8.35億円)で、前年同期比それぞれ20.1%、5.4%減少した。また、いずれの事業も営業利益は赤字となった。キャラクターライセンス収入の減少は、ライセンス事業における「最低保証金(MG)」の減少によるところが大きい。

これは、川上の顧客によるIPへの投資減少や、IP全体の影響力低下と一定の関連がある可能性がある。例えば、報告期間中の商品ライセンスにおける最低保証金は1,029万元(2.42億円)で、前年同期比26.6%減少した。一方、上期の小黄鴨德盈の各事業の中で最も好調だったのは、リアルエンターテインメント関連のチケット収入だった。同収入は約468万元(1.10億円)で、前年同期比40.8%増加した。このため、小黄鴨德盈は今後、自社運営型のリアルエンターテインメント事業を拡大する計画であり、チケット収入が将来的な重要収益源になると見込んでいる。

2021年に『仙剣奇侠伝』IPを取得した中手游では、上期のIPライセンス収入が約2,306.7万元(5.43億円)となり、前年同期比30%減、前期比70%減となった。決算資料によれば、これは一部のライセンス提携について合意に至ったものの、上期中に契約締結まで完了しなかったことが主な要因である。そのため、IPライセンス収入は、新規ゲームの契約・リリースの有無によって大きく変動する。

なぜ明暗が分かれたのか?「下降相場」でも爆発的に伸ばす成長企業の共通点

一方で、厳しい市場環境と言われる中でも、目覚ましい成果を上げている企業は少なくない。例えば、閲文集団の上期IP権利収入は前年同期比41.9%増の16.1億元(378.7億円)となった。そのうち、IP派生商品事業のGMV(流通取引総額)は過去最高となる7.8億元(183.5億円)に達し、前年同期比60%増加した。傘下の派生商品ブランド「閲文好物」は、商品・チャネル・運営・エコシステムの4分野を継続的に強化し、中国国内の国産アニメ・漫画派生商品市場における主要プレイヤーの一つとなっている。報告期間中、「閲文好物」は『全職高手(邦題:マスターオブスキル 』『詭秘之主(Lord of Mysteries)』『一人之下』などの人気IPを中心に、新たな商品ラインを継続的に開発した。

同時に、IP誕生日イベント、リアルイベント、テーマ型ポップアップストアなど、多様なファン交流イベントも展開した。オンラインでは、618期間中の「閲文好物」公式旗艦店のGMVが359%増加。オフラインでは、1~7月のポップアップイベントGMVが前年同期比203%増加した。さらに、8月に開催された2026年「異人十載・道生万物」イベントでは、上海鑫耀光環および右江路エリアをメイン会場とし、初日の来場者数が約7万人に達した。これは同商業施設における今年の1日当たり来場者数として過去最高となり、通常時の約2倍となった。また、商業施設全体の売上高を前年同期比18.8%押し上げ、最初の週末に開催された『一人之下』リアルポップアップストアでは、関連グッズの売上高が100万元(0.24億円)規模に達した。

大麦娯楽の決算資料によると、サンリオファミリー、ちいかわ、ポケモンなどの世界的IPと契約している阿里魚は、下半期、すなわち2025年第4四半期~2026年第1四半期の売上高が10.1億元(237.6億円)で、前年同期比27.7%増加した。営業利益は1.68億元(3.95億円)で、前年同期比33.5%増加した。サンリオの決算資料も、中国市場における関連IPの好調な状況を裏付けている。2026年上期のサンリオ中国の売上高は7.81億元(183.7億円)で、前年同期比41.8%増加し、わずか半年で2024年通年の売上高を上回った。

 阿里魚の業績成長の最大の要因は、従来のIP再ライセンス事業に加え、IPの企画・開発から運営まで、より深くIPバリューチェーン全体に関与するようになったことにあると考えられる。例えば、IPブランドの小売事業において、阿里魚は近年非常に積極的な動きを見せている。昨年から、上海、成都、広州、三亜、深圳、杭州、海口、武漢、北京など複数の都市で、ちいかわIPのポップアップイベントを展開した。昨年9月には上海・南京東路に初のちいかわ常設店舗をオープンし、今年は杭州、南京にも常設店舗を展開した。さらに9月には、三亜、広州、深圳の3都市でも新たな旗艦店がオープンしている。

大麦の過去の決算資料では、リアル店舗の開業後の販売実績は良好であり、今後は現在の店舗モデルをベースとして、他のIPや他都市への横展開を進め、規模を拡大していく方針が示されている。また、店舗形態についても、単純な小売型から体験型へと拡張していく予定だという。

上海電影のIPバリューチェーン全体の開発・運営主体であり、『大鬧天宮(邦題:大暴れ孫悟空)』『葫芦兄弟(邦題:ひょうたん童子)』『黒猫警長』『天書奇譚』『中国奇譚』『浪浪山小妖怪』などのIPを保有する上影元も好調だった。上期売上高は9,972.7万元(23.46億円)で、前年同期比148.9%増加。純利益も129.5%増加して3,005.4万元(7.07億円)となった。上期には、上海電影が制作した『浪浪山小妖怪』が複数の国で公開され、アヌシー国際アニメーション映画祭のコンペティション部門にも選出された。ライセンス面では、報告期間中にペプシ、伊利などの大手ブランドとのライセンス案件を19件新規獲得し、総露出数は36.2億回、最終消費者向けGMVは約9.5億元(22.34億円)に達した。また、上海電影はAI、XR、MLEDなどの技術を本業に深く融合させる取り組みも進めており、『浪浪山小妖怪:幻境奇旅』『大鬧天宮』などのXR没入型プロジェクトを全国各地へ展開することを加速している。

「羅小黒」を保有する寒木春華も好調だった。上期には放送中の新作がなかったにもかかわらず、商品化関連収入は4,164.5万元(9.79億円)、純利益は458.5万元(1.08億円)を達成した。これは、優良IPであれば「コンテンツの空白期間」においても安定した商品化収益を生み出すことが可能であり、IP資産の長期的な価値を示している。

IP小売・カード(TCG)ビジネスの課題――「売上は伸びても利益が残りにくい」構造問題

IP権利者だけでなく、中流の小売・流通チャネル企業の業績も見てみよう。チャネル面では、以前集計した6社のIP小売企業のうち、名創優品の上期売上高は105.13億元(247.27億円)で、前年同期比21.6%増加した。

注目すべきなのは、名創優品自身のトイ・コレクタブル事業も好調だったことである。傘下の主要IP「YOYO(右右酱)」は、「YOYO萌趣歪頭シリーズ」「YOYO『トイ・ストーリー5』インスピレーションシリーズ」「YOYOバースデーシリーズ」の3つの商品ラインに牽引され、8月には全世界での売上高が2億元(47.04億円)を突破し、過去最高を記録した。これは今年6月、7月に続き、3か月連続で月間売上高が1億元(23.52億円)を突破したことを意味する。

Bilibiliの「IP派生商品およびその他」部門の売上高は8.98億元(211.2億円)で、前年同期比1%減少した。この部門の収益は主に、会員購入プラットフォームにおけるIP実物商品の販売、自社IPの外部ライセンス、自社派生商品事業「bilibiliGoods」、BW/BMLなどの大型オフラインイベントのチケット・スポンサー収入、eスポーツ関連IPの再ライセンスなどから構成されている。その中でも、アニメ『天官賜福』、『時光代理人』、アニメ『凡人』などを代表とするIPライセンス事業は好調で、今年に入ってから複数の代表的な案件が生まれている。

晨光傘下の文具・雑貨小売ブランド「九木雑物社」は、上期売上高8.76億元(206億円)で前年同期比15.9%増加した。同時に、IP関連商品のリソース投入および販売比率も上昇している。報告期間末時点で、晨光は中国全国に約900店舗の九木雑物社を展開している。また、少し前には「スヌーピー」とのコラボレーションを大学向けのマーケティング施策に活用し、消費者から高い支持を得た。

小芒ECは、芒果系IPの商業化における新たなモデルを模索し、動画コンテンツの視聴からインタラクティブな消費までをつなぐビジネスサイクルを構築している。上期の総GMVは92億元(2163.8億円)、売上高は2.8億元(65.9億円)で前年同期比46.6%増加。純利益は605.1%増の838万元(1.97億円)となった。ただし、全体としての利益率は依然として低い。主要商品カテゴリーでは、カード事業の品質向上、ぬいぐるみカテゴリーの拡大、アーティストのアルバムやアーティスト系ソーシャルメディアIPなど、新カテゴリーの売上構成比が着実に上昇している。カード事業では、今年8月、小芒ECが「ヒット商品メーカー」とも称されるWUSTYLEと戦略的な包括提携を締結した。

両社は、芒果TVで放送中・放送予定の映像作品をベースに、コレクター向けカード商品の開発を共同で進める。第1弾のIPリストには、『野狗骨頭』『御廷謡』など複数の人気映像作品が含まれている。

映画・ゲーム・アニメIPの派生書籍出版分野を代表する中信出版は、今年初めてIP運営事業を会社の4大事業の一つに位置付けた。同事業では、IP派生商品の専門チャネルを構築するとともに、オンラインではインタレストECの多角展開に加え、オフラインでは「仕組み化・水平展開可能」な直営店舗やテーマ型ポップアップストアを展開している。決算資料によると、今年は単一IPの派生商品の販売規模が2,000万元(4.70億円)を突破し、同事業の総売上高は4,222.6万元(9.93億円)、前年同期比174.5%増となった。

しかし、すべての企業が好調なわけではない。今年3月、電魂網絡が総額4,920万元(11.57億円)のキャッシュを投じて株式の51%を取得した二次元派生商品企業「上海漫魂」は、厳しい業績となった。上期の全国オフライン店舗数は23店舗で、累計売上高1,447.48万元(3.40億円)、純利益は49.55万元(1,165万円)、1店舗当たりの平均純利益はわずか2.15万元(50.5万円)だった。過去の買収公告によると、2025年の漫魂の売上高は5,605万元(13.18億円)、純利益220万元(約5,174万円)だった。

昨年、「谷子経済(グッズ経済)」全体が低迷したことに加え、今年はさらなる下落トレンドが進み、状況はより深刻さを増している。さらに、電魂による買収契約には業績連動型の条件が付されており、漫魂には2026~2028年の純利益についてそれぞれ800万元(1.88億円)、1,120万元(2.63億円)、1,440万元(3.39億円)以上、売上高についてそれぞれ1億元(23.52億円)、1.3億元(30.58億円)、1.6億元(37.63億円)以上の達成が求められている。目標未達の場合には、相手方が一定の補償(ペナルティ)を行う契約となっている。現在の経営状況と業界環境を踏まえると、漫魂が設定された目標を達成することは容易ではないと考えられる。

川下の派生商品企業については、雷報が以前、玩具・トイ・コレクタブル関連16社の業績を分析している。今回は、その中でもカード市場に焦点を当て、代表的な6社を取り上げる。

まず、卡游の主要サプライヤーである京華激光の業績を見てみよう。決算資料によると、上期の文創事業売上高は前年同期比70.90%減少した。同社によれば、その主な理由は、2024年上期には「My Little Pony」、2025年上期には『哪吒』というヒットカード商品が中国国内で大きな人気を集め、文創事業の生産量が高水準となっていた一方、今期は新たなヒット商品がなく、文創事業が大きな影響を受けたためだという。この京華激光の決算における説明は、同社がサービスを提供している卡游についても基本的に当てはまると考えられる。

また、上述した精英動漫の業績においても、「顧客1社」からの収入が70%以上減少している。

その他のカード関連企業を見ると、凱知楽(Kidsland / キッズランド)は2025年9月にポケモンIPとの提携を発表し、TCG市場へ参入した。2025年末以降、凱知楽は小売店舗や委託販売カウンターにポケモン専用コーナーを順次設置し、上期時点で主要小売拠点をカバーした。ポケモンは急速に凱知楽の売上上位ブランドとなり、全体の小売業績を押し上げた。ただし、6月30日時点では、凱知楽の小売店舗および委託販売カウンターの数はいずれも減少している。小売店舗は21店舗減少して96店舗、委託販売カウンターは42か所減少して311か所となった。凱知楽はTCG事業の具体的な業績を開示していない。上期のグループ総売上高は4.5億元(105.84億円)で前年同期比6.5%増加、赤字額は1,359.8万元(3.20億円)となったが、赤字幅は80.1%大幅に縮小した。

姚記科技傘下のスポーツカードプラットフォームおよび発行会社である卡淘(璐道粗)の上期売上高は1.29億元(30.34億円)で、前年同期比23.3%増加した。一方、純利益は897.6万元(2.11億円)で、前年同期比26%減少した。

また、姚記科技のトップである姚朔斌氏は昨年、香港上場企業の澳達控股を買収した。そして、もともと電気機械工事を本業としていた同社を、姚記グループ傘下のトレカ・潮玩事業を展開する香港株の上場プラットフォームへと段階的に再編・転換を進めている。今後、澳達股份の英語社名は「Yaopop Holdings」に変更される予定である。また、姚記科技の元董事、副総経理兼財務総監である梁美鋒は、澳達控股の執行董事兼最高財務責任者(CFO)に就任した。さらに、姚記科技の元董事、副総経理、董事会秘書、および姚記潮品の元法定代表者兼董事である卞大雲は、澳達控股のCEOに就任した。澳達控股の上期決算によると、トレーディングカード事業の売上高は832.7万香港ドル(1.67億円)、IPライセンス商品の在庫は2,468.6万香港ドル(4.96億円)となった。

遊園地・アミューズメント施設にゲーム機などを設置し、アニメ・ゲームIPのカード商品を販売している華立科技では、上期のアニメ・ゲームIP派生商品の売上高が1.19億元(27.99億円)となり、前年同期比28.20%減少した。同社の決算資料では、カード商品は現在、屋内型アミューズメント施設における高単価商品カテゴリーである一方、消費意欲の変動を受けやすいと説明している。そのため、華立科技は今年、アニメ・ゲームIPに加えて、世界的な人気スポーツIPを活用した大型商品『NBA超級全明星』を発売し、新たな成長機会を模索している。

不凡玩品は漢儀股份が39%を出資する皮東文化の完全子会社である。不凡玩品は多数の有力IPライセンスを保有している。eスポーツ分野では、王者栄耀プロリーグ(KPL)、和平精英プロリーグ(PEL)、League of Legendsプロリーグ(LPL)という3大トップeスポーツ大会IPのカード独占ライセンスおよび関連派生商品のライセンスを保有している。ゲーム分野では、『王者栄耀(Honor of Kings)』『金鏟鏟之戦(Golden Spatula)』『和平精英(Game for Peace)』などの人気ゲーム関連グッズのライセンスを保有している。アニメ分野では、「セサミストリート」やVsingerバーチャルシンガー(洛天依、言和など)のカードおよび派生商品のライセンスも保有している。

 現在、皮東文化のリソースおよび収益は主にIPリアルグッズ・派生商品分野に集中している。漢儀股份の決算資料によると、皮東文化の上期売上高は7,792.6万元(18.33億円)、純利益は486.3万元(1.14億円)だった。注目すべき点として、今年に入ってから不凡玩品は映画・ドラマ・バラエティ番組などのIPカード市場にも参入し、『逐玉』『愛情没有神話』『終極系列』『現在就出発3』などの映像作品をテーマとしたコレクター向けカード商品を相次いで展開している。

執筆者

中山淳雄(IP FORWARD顧問)
エンタメ社会学者。事業家(エンタメ企業のコンサルを行うRe entertainment[https://reentertainment.online/]創業)と教員(日芸・慶應・立命館)、行政(経産省/内閣府/総務省委員)を兼任しながら、コンテンツの海外展開をライフワークとする。
著書:『キャラクター大国ニッポン』『クリエイターワンダーランド』『エンタメビジネス全史』『エンタの巨匠』『推しエコノミー』『オタク経済圏創世記』など。ビジネス+IT(ソフトバンク)『キャラクター経済圏』
https://www.ip-fw.com/4330699

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