中国コンテンツ市場コラム‐第6回 中国メディア「雷報」が読み解く2026年IP経済圏:ゲームの圧倒的収益力と玩具・コレクタブル企業の明暗
※本編は中国調査会社「雷報」視点のIP経済圏であり、多くの数字的誤植・日本IPの版権への誤解などがある。ただ「どう中国が世界をみているか」を伝えるべく、あえてその数字をそのまま使っている(https://mp.weixin.qq.com/s/tZBWas4JheUG_9fcnhaUlw)
はじめに:IP商業価値の可視化に挑む「雷報」の独自試算
決算発表シーズンを終え、各上場企業から2026年上半期までの業績が相次いで発表された。中国のIP・エンターテインメント業界メディア「雷報」はこれまでにPOP MART(泡泡玛特)、Sanrio(サンリオ)、Hasbro(ハズブロ)、Maoyan Entertainment(猫眼娯楽)など、複数企業の業績について分析を行ってきたメディアだ。しかし、企業単位の業績以上に、業界関係者や消費者の関心を集めているのが、IP単位で見た収益規模ではないだろうか。
では、国内外で高い知名度を持つIPが、2026年に実際にどれほどの収益を生み出しているのかを整理することは可能なのだろうか。これまで、IPの商業価値を測る指標として、海外の機関がWikipediaのデータなどをもとに作成したとされる「世界で最も稼ぐIPランキング」が、業界メディアなどでたびたび取り上げられてきた。同ランキングには一定の参考価値がある一方で、運営機関の公式性が明確ではないこと、データソースが十分に公開されていないこと、情報の引用方法に厳密性を欠くケースがあること、さらに最新の市場動向を十分に反映していないことなど、いくつかの課題も指摘されている。
「雷報」も、過去に公開した記事『2025年、最も稼いだIPランキング発表「哪吒」も「LABUBU」もランクインせず?』の中で、こうした問題点について取り上げている。
そこで今回、より客観性と速報性の高いIP収益ランキングの作成を目指し、「雷報」は長年にわたる業界調査・分析をもとに、関連企業の決算資料や公開データを収集・整理した。本稿は同メディアのオリジナル、『2026年以降、世界で最も稼いだIPランキング――不完全集計』である。
※本ランキングは公開情報をもとにした独自集計であり、手作業による集計のため、一部に誤差が含まれる可能性がある。なお、本ランキングについては、データソースが多岐にわたることや、企業による財務情報の開示に限りがあること、またIPの種類によって収益の分配モデルが異なることなどから、各IPの年間における一部の収益実績をもとに、その商業的価値を示したものである。したがって、すべての収益を網羅した完全かつ客観的なランキングではない点には留意が必要だ。

ゲーム・映画IPの収益力:ゲーム『Honor of Kings(王者栄耀)』が首位、映画『スパイダーマン』は歴代興行トップ3へ
今回のランキングには、合計62のIPがランクインしている。ただし、これは「世界で最も稼いだIP」の上位62位を意味するものではない。各IPについて、収益を裏付ける客観的なデータが確認できること、あるいは各ジャンルにおいて極めて代表性の高いIPであることを基準として選定されている。
まず、ランキング上位を見てみよう。「Honor of Kings(王者栄耀)」は、2026年の推定収益が164.6億元(約3,786億円)に達し、ランキング首位となった。また、「Peacekeeper Elite(和平精英)」は100.6億元(約2,314億円)で4位にランクインしている。なお、この2つの数値はいずれもAppMagicのデータをベースに、AIによる推計を加えたものとなっている。
Mobilegamer.bizがAppMagicのデータをもとに集計した結果によると、2026年上半期の「Honor of Kings(王者栄耀)」の総収益は約10億ドルに達したとされる。この数字には、第三者Androidストア経由の収益(一般的にはiOS+Google Play経由の1.6~2倍程度とされる)、ウェブストアおよび広告収入は含まれておらず、さらにプラットフォーム手数料を差し引いた後の金額となっている。
それでも、「Honor of Kings(王者栄耀)」はゲーム分野において他のタイトルを大きく引き離し、圧倒的なトップとなった。一方、「Peacekeeper Elite(和平精英)」の総収益は6.76億ドルに達した。また、Scopelyの「Monopoly Go」は約6.04億ドルを記録し、今回のランキングでは12位にランクインしている。

続いて、Spider-Man: Brand New Day(スパイダーマン)とToy Story 5(トイ・ストーリー)が、それぞれ158.3億元(約3,3003,641億円)、109.4億元(2,516億円)で2位、3位にランクインした。このうち「スパイダーマン」については、猫眼のデータによると、公開からわずか1カ月足らずで世界興行収入が23.56億ドルを突破。『哪吒之魔童闹海(邦題:ナタ 魔童の大暴れ)』や『アバター3』を上回り、世界映画史上の歴代興行収入トップ3に浮上したとしている。
一方、「トイ・ストーリー5」の世界興行収入は11.29億ドルを記録。シリーズ5作品の累計興行収入は40億ドルを超えている。さらに、ディズニーによると、「トイ・ストーリー」IPの年間世界小売売上高は10億ドルを超えるという。
このほか、映画興行収入をもとに今回のランキングにランクインしたIPは、12作品に上る。ハリウッド作品では、『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』が10.13億ドルの世界興行収入を記録。2026年に世界興行収入10億ドルを突破した5作品の一つとなり、今回のランキングでは7位にランクインした。一方、『ミニオンズ/怪盗グルーのミニオン超変身』や『モアナと伝説の海:新たなる旅立ち』は、前作と比較すると興行面ではやや伸び悩む結果となっている。
中国国内では、猫眼による最終興行収入予測が19.5億元(約449億円)に達している『八仙!』が、中国国産アニメIPとして最高位となる24位にランクイン。また、『熊出没』シリーズは、『熊出没・年年有熊』が10.7億元(約246億円)の興行収入を記録し、30位となった。
日本では、今年特に好調だったアニメIPとして、『名探偵コナン:ハイウェイの堕天使』と『ちいかわ 人魚の島のひみつ』の2作品が挙げられる。両作品の日本国内における興行収入は、それぞれ136.9億円、110.9億円を記録。日本映画史上の歴代興行収入ランキングでは、それぞれ27位、42位に位置している(8月26日時点)。
「原神」については、ゲーム系配信者「天天背锅崩坏娘」による独自推計をもとにすると、2026年上半期の全プラットフォームにおける売上高は保守的に見積もって約106.8億元(約2,456億円)に達するという。中国国内の「二次元系/女性向けゲーム」市場ではトップとなる規模だ。プラットフォーム手数料などを差し引いた後の収益については、AIによる推計で約81.1億元(約1,865億円)となり、今回のIPランキングでは5位にランクインしている。また、同配信者のデータをもとに収益規模を算出できるゲームIPは多数存在する。今回はその中から、代表性の高い一部のIPのみをランキングに組み入れた。具体的には、15位の『崩壊:スターレイル』、18位の『鳴潮』、21位の『ゼンレスゾーンゼロ』、23位の『アークナイツ:エンドフィールド』、25位の『恋と深空』、そして38位の『陰陽師』などが含まれている。
玩具・コレクタブル・アニメIPの多様化と個別IPの明暗
今回のランキングでは、6位~10位にも玩具・コレクタブル関連企業が展開するIPが多くランクインしている。Hasbroの『マジック:ザ・ギャザリング』は68.2億元(約1,569億円)の収益で6位。バンダイナムコの「機動戦士ガンダム」は55. 7億元(約1,024億円)で8位、Mattelの「ホットウィール」は48.6億元(約1,000億円)で9位となった。
そして、POP MARTの「THE MONSTERS(LABUBU)」は44.5億元(約920億円)で10位にランクイン。TOP10の中で唯一、中国発の非ゲームIPとなった。11位~20位にも、上記企業が展開するIPが数多く入っている。例えば、「ONE PIECE」と「ドラゴンボール」は、主にバンダイナムコによる関連商品の売上を背景に、それぞれ13位、14位にランクイン。
また、POP MARTの上期決算における最大の注目材料の一つとなった「星星人(the Star Man)」は、2026年上半期の売上高が前年同期比580.6%増の26.5億元(約610億円)に急伸し、17位にランクインした。これは、TOP20に入った中国発のコレクタブルIPとしては、LABUBUと並ぶ2つのIPのうちの一つとなっている。さらに、Mattelの代表的なIP「バービー」は21.2億元(約488億円)で20位となった。
各社の主要IP単位で見ていくと、バンダイナムコの主要9IPは好調を維持。IP単位で見てみると、2026年上半期は「ドラゴンボール」と「プリキュア」の2つのIPが減収になったものの、残りの 7つのIPは前年同期比で増収となっている。なかでも、バンダイナムコの「屋台骨」ともいえる「機動戦士ガンダム」は、9つのIPの中で売上規模が最も大きいだけでなく、成長率でもトップとなった。2026年上半期の売上高は前年同期比27.71%増と大幅に伸長し、同社のIPポートフォリオをけん引する存在感を改めて示している。
一方、POP MARTは2026年上半期に、6つのIPが売上高10億元(約210億円)を突破し、11のIPが1億元(約21億円)を超えた。しかし、2025年下半期と比較すると、主要9つのIPで前期比売上減が見られた。なかでも、2025年に世界的な人気を集めた「THE MONSTERS(LABUBU)」は、前期比52.3%減と大幅に減少。また、長年にわたりPOP MARTを支えてきた「SKULLPANDA」も、売上高の減少傾向に直面している。こうした中、「星星人」だけが明確な成長を見せたIPとなった。なお、売上高の具体的な数値が公表されていないものの、1億元を超えたとみられる残り3つのIPについて、「雷報」は「PUCKY」が約2億元、「HACIPUPU」が約1.8億元、「叛桃」が約1.3億元と推計している。

Mattelの業績は、さらに厳しい状況となっている。2026年上半期、同社の主要3ブランドのうち、「バービー」と「フィッシャープライス」はいずれも前年同期比で減収となった。なかでも「バービー」は前年同期比16%減、「フィッシャープライス」は9%減と、それぞれ大幅な落ち込みを見せている。
中国発アニメIPの成長とプラットフォーム・新興ブランドのIP展開
このほかにも、注目すべきIPはいくつか存在する。まず挙げられるのが、2025年以降、IPとしての商業的ポテンシャルを急速に高めているアニメ『凡人修仙伝』だ。同IPでは、2026年の新シーズン放送開始前後から商品化やコラボレーションが相次いで展開され、今年に入ってからの関連グッズおよびコラボ商品の売上高は、ファンによる各種集計データをもとにすると1.5億元(約35億円)を超えると推定される。今回のランキングでは47位となった。代表的な販売実績としては、銅師傅との第1弾コラボ商品は、累計売上高が7,000万元(約16億円)を突破。『紅塵悟道』シリーズの公式グッズは、クラウドファンディングで1,640万元(約3.8億円)以上を集めた。また、五粮液(白酒メーカー)とのコラボレーションギフトボックスは、発売から2カ月で売上高1,000万元(約2.3億円)を突破。さらに、POP MARTとの「共鳴」コラボによるブラインドボックスフィギュアは、ECプラットフォーム上での累計売上高が620万元(約1.4億円)を超えている。

20年以上にわたって展開され、中国国産キッズアニメの「三大人気IP」の一つとも称される『喜羊羊与灰太狼(シーヤンヤンとホイタイラン)』も注目すべきIPの一つだ。
同IPは、奥飛娯楽(Alpha Group)の子会社である広東原創動力文化伝播有限公司が運営している。奥飛娯楽の2026年上半期決算によると、報告期間中、同社は3,908万元(約9億円)の売上高と2,966万元(約6.8億円)の純利益を計上した。収益の中心は、コンテンツの制作・配信およびIP著作権の運営事業となっている。注目したいのは、奥飛娯楽が近年、コレクタブル事業にも力を入れている点だ。同社傘下のコレクタブルブランド「玩点無限」は今年、「積み上げ玩具」に特化したプロダクトブランドから、「トレンド派生商品」を構築するライフスタイルプラットフォームへとブランド戦略をアップデートした。さらに今年5月には、オリジナルアーティスト・ライフスタイルブランド「miemie world」の設立も発表。現在、同ブランドでは「susumi」「dudu&yaya」「paddi」「t baby」「咪兜」「毛不理」「粒粒盐」など、さまざまなジャンルのコレクタブルIPを10以上展開・準備している。決算資料によると、コレクタブル事業を担う子会社「潮流無限」は、2026年上半期に7,255万元(約16.7億円)の売上高、1,954万元(約4.5億円)の純利益を計上した。純利益はすでに2025年通期の1,807万元(約4.2億円)を上回っており、同社のコレクタブル事業が急速に拡大していることがうかがえる。
一方で、具体的なIP別収益を開示せず、保有するIP全体を一つの事業としてまとめて業績を公表している企業も少なくない。例えば、『全職高手(マスター・オブ・グローリー)』『一人之下』『狐妖小紅娘』『詭秘之主』『道詭異仙』などの大型IPを保有する閲文(China Literature)の2026年上期決算によると、IP派生商品のGMVは過去最高となる7.8億元(約179.4億円)に達し、前年同期比60%増となった。また、明日、最新四半期決算の発表を予定しているBilibiliも、現時点ではIP別の詳細な収益を公表していない。同社は年初、2025年にアニメ『凡人修仙伝』『天官賜福』『時光代理人』『百妖譜』『牧神記』などを中心に、保有IPによるコラボレーションを460件以上実施し、商品売上高13億元(約299億円)以上を創出したと明らかにしている。
さらに、MINISO(名創優品)については、創業者の葉国富氏が、近年同社が積極的に展開しているコレクタブルIP「YOYO右右醤」について、2026年の中国国内市場における売上高が6億元(約138億円)を超える可能性があると発言している。海外市場を含めれば、コレクタブルIPの「10億元クラブ」入りも視野に入るという。また、同社のコレクタブルブランド「TOP TOY」が重点的に展開するIP「糯米児(Nommi)」についても、今年の売上高が6億元(約138億円)を超える可能性があるとされている。実際にこの水準に到達したかどうかについては、今後、具体的な業績データが開示されるかどうかが注目される。
もっとも、今年6月には『トイ・ストーリー5』とのコラボレーションが追い風となり、「YOYO」は単月で1億元(約23億円)を超える売上高を記録した。さらに、名創優品は人気ガールズグループのメンバー、LISAとのコラボレーションを発表。そのラインアップには「YOYO」とLISAを組み合わせたコラボぬいぐるみも含まれている。こうした積極的なプロモーション展開を踏まえると、YOYOの年間売上高10億元という目標も、いよいよ現実的な射程圏内に入ってきたと言えそうだ。

世界の玩具・コレクタブル企業 2026年上期業績比較
ここまで各IPの動向を見てきたが、IPランキングに加えて、本記事では中国国内外の玩具・コレクタブル関連企業について、2026年上半期の業績も独自に整理した(手作業による集計のため、一部に誤差が含まれる可能性がある)。

売上高ベースで見ると、世界の玩具・コレクタブル企業トップ5は、LEGO、バンダイナムコ、POP MART、Hasbro、Mattelの5社となった。5社はいずれも、2026年上半期の売上高が100億元(約2,300億円)を超えている。なかでも、LEGOの圧倒的な優位性が際立っている。2026年上半期、同社の売上高は419億デンマーク・クローネ(約439.5億元、約1兆109億円)に達し、前年同期比21%増を記録。過去最高を更新した。また、純利益は前年同期比32%増の86億デンマーク・クローネ(約90.2億元、約2074.6億円)となった。
POP MARTは今年に入り業績の伸び率が大きく鈍化しているものの、売上高・利益ともに依然として非常に高い水準を維持している。特に注目されるのが、50.4億元(約1159.2億円)に達した純利益だ。世界の大手玩具・コレクタブル企業の中では2位に位置し、売上高が100億元以上多いバンダイナムコを上回る水準となっている。
一方、トップ5の中では、Mattelにはやや出遅れ傾向が見られる。同社の2026年上半期の純利益はわずか0.43億ドル(約2.9億元、約66.7億円)にとどまり、第2四半期には1,820万ドルの最終赤字を計上した。その主な要因は、商品販売自体は前年同期比8%増と伸長したものの、それに伴う売上原価が15%増、広告・マーケティング費用が45%増と、コスト側の伸びが売上を大きく上回ったことにある。その結果、上半期の営業損失は3,100万ドル(9,180万元、約21億円)に達した。非営業損益や法人所得税関連のプラス要因による下支えがなければ、最終利益はさらに厳しい結果となっていた可能性が高い。
まとめ:複雑化するマネタイズ構造と、世界市場で存在感を増す中国発IP
確かに、各企業で業績の開示基準が異なることや、そもそもIPのマネタイズ手法が複雑であることなどを考えると、完全に公平かつ客観的な「最も稼いだIPランキング」を作成することは、ほぼ不可能に近い。しかし、それはデータを整理・分析することに意味がないということではない。各社の決算資料や公開情報を相互に照合することで、現在のIP市場がどのような状況にあるのか、その全体像をある程度浮き彫りにすることはできる。まず、ゲームIPの収益力は依然として他ジャンルを大きく上回っている。また、映像コンテンツ業界全体が厳しい環境に置かれる中でも、本当に優れたコンテンツは依然として世界市場から支持を獲得できることが分かる。さらに、大手玩具・コレクタブル企業では、複数のIPを組み合わせたIPポートフォリオの相乗効果が徐々に現れ始めている一方、そこから次の成長曲線をいかに描いていくかという課題も残されている。そして何より注目すべきなのは、ゲーム、コレクタブル、アニメなど複数の分野において、中国発のオリジナルIPが成長を続け、世界トップクラスのIPとの距離を着実に縮めつつあることだ。
執筆者
中山淳雄(IP FORWARD顧問)
エンタメ社会学者。事業家(エンタメ企業のコンサルを行うRe entertainment[https://reentertainment.online/]創業)と教員(日芸・慶應・立命館)、行政(経産省/内閣府/総務省委員)を兼任しながら、コンテンツの海外展開をライフワークとする。
著書:『キャラクター大国ニッポン』『クリエイターワンダーランド』『エンタメビジネス全史』『エンタの巨匠』『推しエコノミー』『オタク経済圏創世記』など。ビジネス+IT(ソフトバンク)『キャラクター経済圏』
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