【中国の商標法】三年不使用取消審判における証拠認定(五)
中国における「商標法」第49条第2項は、「登録商標がその査定に使用された商品の一般名称となったり、正当な理由がなく3年連続で使用されたりしていない場合、いかなる企業または個人も商標局に当該登録商標の取消を申請することができる」と規定している。
前回のコラム「【中国の商標法】三年不使用取消審判における証拠認定(四)」に基づき、本文は三年不使用取消審判のさまざまな場面における異なる証拠状況について分析・検討する。
五.「企業内部での使用証拠は、商標法上の『使用』と認められるか」
Q: 企業内部での使用証拠は、商標法上の「使用」として認められるのだろうか。
A: 三年不使用による登録取消案件において、一部の商標権者は、係争商標の使用を証明するために、店舗の内装、従業員の制服、日記帳、紙コップ、封筒、紙袋、名刺などに係争商標が表示されている企業内部での使用証拠を提出している。さらには、商品検査報告書や発注書を提出する例も見られる。
しかし、これらの証拠のみでは、いずれも一方的な内部使用の証拠に過ぎない。また、検査報告書は、商品が品質基準を満たしていることを示すのみで、係争商標が実際に市場で商業流通していたことを証明するものではない。したがって、これらの証拠だけでは、係争商標の実際の使用を証明することはできず、商標法上の「使用」として認められる証拠とは言えない。
下記の具体的な案例から、官庁の企業内部使用証拠への判断傾向がわかる。
第18010052号「增彩ZENGCAI」商標の取消再審案件において、国家知識産権局は以下のように判断した。
商標所有者より提出された店舗内装の写真は自制の証拠であり、またその一部には、作成日時が記載されておらず、販売明細書も被許諾者側のみの押印であり、他の証拠による証明がない状況では、係争商標の実際の使用状況を証明することは困難である。商標所有者より提出されたすべての証拠をまとめて考慮すると、再審対象商品において係争商標が使用されたことを証明するには不十分である。最終的に係争商標は取り消された。
また、第29003132号「微笑节及び図」商標の取消再審案件においても、国家知識産権局は、商標所有者より提出された検査報告書に係争商標の表示がなく、また、同報告書は市場で管理者からの市場流通の商品への任意的な検査ではなく、商標所有者からの委託検査であったため、この証拠だけでは検査対象となる製品が市場に流通していたことを証明できないと判断し、最終的に係争商標は取り消された。
弊所代理人コメント
このように、内部使用証拠や検査報告書、出荷伝票、注文書など単独では、係争商標が商業的に使用されていたことを証明するには不十分である。つまり、三年不使用取消審判の証拠を収集するときに、「商標使用の公開性」を証明する必要があり、市場流通において係争商標の使用を証明するには、他の有効な商業使用証拠を併せて提出し、証拠チェーンを形成することにより、商標法上の「使用」として認められることが必要である。
出典:「中華商標」2024年第8号 日付:2024年12月9日
https://mp.weixin.qq.com/s/bLvBoX8XPWWbjSB0s-iS1g
編集・翻訳者情報
担当:IP FORWARD法律特許事務所
中国商標代理人 戴 元
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