コラム

税関セミナー開催に関する留意事項

 中国から海外への模倣品の流出を止めることは、グローバルレベルでの効率的な模倣対策の実施につながり、その意味で、中国税関対策は極めて重要な問題となってくる。中国税関も模倣品の差止めに対して積極的であるが、他方で、2020年時点で中国税関登録している企業数はすでに1.6万社を超えており、税関側も必ずしもこれら税関登録している各企業の状況、その模倣品事情を正しく把握しておらず、結果として、全体としての差し止め率は高いとは言いにくい側面も否定できない。

 この問題意識に基づき、如何に、中国税関にて、自社の模倣品の差止め率を上げていくかということが重要になるが、そのためには、自社の商標のみならず、税関における差止め率を高めることにつながる多くの情報を提供して、これを知ってもらったうえ、税関職員の差し止めの意欲を高めていくことがポイントとなる。この際、有益な対応として、権利者が、直接、税関職員と対話して、こうした情報を提供する「税関向けセミナー」が重要になるが、以下、当該対応の概要を紹介するとともに、実務上の留意点を紹介する。


(1)税関登録

 まず中国税関での模倣品差止め活動は、権利者の申請を契機とする差止めと、税関の職権による通関中止措置を契機とする差止めの2パタンが存在する。

 前者のパタンについては、例えば、権利者が、中国国内で模倣対策を実施していた際に、個別に模倣品が輸出される事実を把握した等の場合、権利者は、ピンポイントでこれを差し止めるべく、税関に対して、差止め申請をすることができる。但し、実際のところ、模倣品に関する詳細(どの港か、どのコンテナか、いつ輸出入されるのか等)情報を税関に提供出来ない限り、利用できないことになっている。従って、実務上、これを契機とする差止めは多くはない。

 一方で、後者のパタンについては、この職権による通関中止措置がなされるためには、まず、権利者において、自身の有する知的財産権を対象知的財産権の登録とは別に、税関に登録することが必須である[3] 。逆に言えば、登録がなされない限り、職権で通関中止措置がなされることはなく、模倣品輸出業者は、自由に模倣品を輸出できてしまうことになるので、税関登録は、模倣品の海外流出抑制の第一歩といえる。


(2)税関向けセミナーの目的

 「税関向けセミナー」の際、重要となるポイントは基本的に2つあって、一つ目は、税関に対して、差止め率アップにつながりうる的確な情報を提供することである。もう一つは、税関職員に対するブランドイメージのインプット・強化である。「税関向けセミナー」の場を利用し、税関側に有益な情報を提供して税関業務に協力する姿勢を見せて交流を深めることで、税関職員に権利者ブランドのことを深く、好意的に意識してもらうようになり、よりアクティブに同ブランドの差止めに尽力してくれるようになることが期待できるようになる。


(3)税関向けセミナーの開催

 税関向けセミナーは、税関からの呼びかけに応じて参加するケースと、税関代理人を通じて権利者の方から税関に申入れて開催するケースがある。

 税関からの呼びかけに応じて参加するケースについては、各地税関自らが企画して催し、特に、春の4月前後と夏の8月前後において多く開催される傾向である。一方で、税関代理人を通じて税関に申し込むを入れての開催は、基本的に関係者の都合が合えば、随時開催できることが多い。但し、近年はコロナウイルスの要因により、開催までに時間がかかるなどの影響も生じているが、おそらく2022年後半から、徐々に正常化していくのではないかと思われる。

 税関向けセミナーは「会議形式」(一般的には税関オフィスに赴き、知財担当官2~3 名との打ち合わせを実施する形式となります。)と、「セミナー形式」(一般的には税関のトレーニング施設ないしホテル等の会場を貸し切って、現場担当官10 ~20名程度に対するレクチャー形式となります。)の2 パタンがある。従前は、税関に情報を提供しても、現場担当官に確実に伝達されないことも少なくなかったので、セミナー形式の方が有用であったこともあったが、最近は、後述する税関内部のシステムの整備等もあり、税関の知財担当官に的確な情報を提供すれば税関全体で共有される仕組みが整備されてきており、むしろ、会議形式の方が税関側の率直な問題意識なども共有、議論しやすい点もあるので、同形式の方が有益であるという側面も出てきている。税関側について言えば、事実上、特に規模が大きな税関は業務多忙の関係上、一度に多くの関連職員を集められないため、「会議形式」が受け入れられ易い傾向ではある。


(4)税関向けセミナーで税関にインプットすべき重要情報

 通常、以下のような情報が上記判定に役立つ有益情報としてインプットされていることが多いのでこうした情報の提供が推奨される。

①模倣業者情報(「ブラックリスト」)

・模倣品製造、輸出業者の会社名、住所、製品情報など

②模倣品の商流

・模倣品製造、輸出業者が集中する地域名

・模倣品通関が集中する税関名、模倣品の仕向国・税関名

③正規品関連情報

・正規品の一般的な輸出価格相場

・正規品の輸出ルート(正規品の製造地域名、利用する税関名、仕向国など)

 なお、ホワイトリスト(権利者が授権・許諾した正規品の製造、輸出業者のリスト)は、直接、権利者より、インターネット経由で税関総署のシステムに登録できる仕組みになっているので、個別税関に対して、個別に提供する意義は大きくない。

④その他

・中国内外における模倣品の摘発、差止事例


 弊方の実務経験上、少なくない権利者企業が、真正品と模倣品の真贋鑑定にかかる情報を積極的に提供しようとすることがあるが、上述の各情報は対象貨物を通関中止して、製品が格納されているコンテナを開梱するか否かを判断する場面で同判断に役立つ情報であるのに対して、かかる真贋鑑定情報は開梱後に役立ちうる情報であるため、これを提供したとしても、直ちに模倣品の差止め率が上がることにはならず、もとより、真贋鑑定については、権利者自身が、対象貨物が通関中止され、コンテナが開梱された後、模倣品疑義品の写真を通じて対応することでもあるので、税関側にとって、必ずしも必須の情報という訳ではないのが実情である。

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