作品名及びキャラクター名が『商標法』第三十二条にいう「先行権利」を構成するかに関する司法認定
(三)作品名及びキャラクター名に係る先行権益保護における考慮要素
個別具体的な事案において、『商標法』第三十二条の「先行権利」条項を適用して、作品名及びキャラクター名に係る先行権益を保護するか否かを判断するにあたっては、通常、以下の要素を総合的に考慮する必要がある。
1. 係争商標の出願日の前に当該作品が著作権の保護期間内にあったか否か
先行権益の存在を主張するためには、当該作品が著作権法により定められた保護期間内にあることが原則として求められる。作品がすでに公有領域に入った場合には、その作品名及びキャラクター名は、原則として他人の商標登録を排除することはできない。
ただし、これには例外が認められる場合がある。すなわち、当該作品の続編や新シーズン等、現在も創作・更新が継続されているシリーズ作品に該当する場合には、権利者は、著作権保護期間内にある最新作品を根拠として先行権益を主張することができる。また、原作品が公有領域に属するに至った場合であっても、権利者がその後の商業化活動を通じて、映画化、ゲーム化、派生ドラマ等の新たな作品を創作し、当該新作品が依然として著作権保護期間内にあり、かつ原作品の名称やキャラクター名と密接に結び付いているときは、権利者は当該新作品に基づいて先行権益を主張することができる。
例えば、「猫和老鼠 cat&mouse」商標無効宣告請求事件において、二審裁判所は、『猫和老鼠(Tom & Jerry)』の初期作品については著作権保護期間が満了しているものの、同シリーズ作品は継続的に制作・更新されており、映画版作品も公開されていることから、「猫和老鼠」というアニメ作品名の知名度及び評価は継続的に維持されていると指摘し、初期作品が保護期間を経過したことは、「猫和老鼠」が著名なアニメ作品名として有する先行権益に影響を及ぼすものではないと判示した。
2. 係争商標の出願日前において、当該作品名及びキャラクター名が高い知名度を有していたか否か
作品名及びキャラクター名を商標法上保護する必要性は、その知名度及び社会的影響力の程度によって変化する。ある程度以上の知名度を有してから、当該作品名及びキャラクター名は、関連する需要者の間において、特定の作品又は出所を指し示す安定した識別力及び信用を形成し、商業的利用価値と保護の必要性を備えるに至る。
知名度の有無については、作品の公開・流通状況、宣伝・プロモーションの程度、マスメディアによる報道状況、一般公衆の反応、派生商品の開発・販売状況等、複数の証拠を総合的に考慮して判断すべきである。本件において裁判所は、「小猪佩奇」の作品名及びキャラクター名の知名度を認定するにあたり、『小猪佩奇(Peppa Pig)』アニメ作品の放送開始時期、放送・配信プラットフォーム、視聴回数等の要素に加え、関連する宣伝報道の状況及び「小猪佩奇」をテーマとする書籍、玩具、ゲーム等の派生商品の許諾販売状況を含めて総合的に考えた。その結果、「小猪佩奇」は、作品名及びキャラクター名として、対応するアニメ作品及びキャラクターイメージとの間に安定した対応関係を形成しており、高い知名度を有するものとして保護に値すると判断された。
3. 作品名及びキャラクター名を商標として関連商品又は役務に使用した場合、権利者の許諾を受けたもの、又は権利者との間に特定の関係が存在するとの誤認を消費者に生じさせるおそれがあるか否か
いわゆる「混同のおそれ」の有無を判断するにあたっては、標章の同一性又は類似性の程度、商品又は役務の関連性、関連公衆の認識の程度、並びに係争商標出願人に主観的悪意が存在するか否か等の要素を総合的に考慮する必要がある。
ここで留意すべきは、商品又は役務の関連性は、すべての区分の商品・役務に当然に及ぶものではなく、通常は、当該作品名及びキャラクター名の知名度が及ぶ範囲、又は将来的に派生開発が想定される商品・役務の分野を基準として判断されるべきである点である。また、すべての事案において悪意の立証が絶対的に必要とされるわけではないものの、出願人の主観的な態度は、裁判所の判断において重要な考慮要素となる。特に、知名度や混同のおそれが判断上の境界線上にある、やや曖昧な場合には、悪意の存在が、係争商標の成否を決定づける「最後の一押し」となることが少なくない。
本件において裁判所は、係争商標が『小猪佩奇(Peppa Pig)』アニメ作品の名称及びキャラクター名と文字構成において完全に一致していること、また、指定役務である「レストラン、自助式レストラン、飲食店」等が、人気アニメ作品において通常想定される派生的役務の範疇に属することを指摘した。さらに、被告の李某が「小猪佩奇」をテーマとするアニメーション・レストランを実際に開設し、当該会社の作品中のキャラクター名及びキャラクターイメージを中心として複数の商標出願を行っていた点に鑑み、いわゆる「ただ乗り」の主観的意図が認められるとした。
以上の事情を総合考慮し、裁判所は、係争商標を指定役務において使用することは、需要者に混同・誤認を生じさせるおそれがあるとして、最終的に係争商標について無効宣告を行った。
参考文献
[12] 北京市高級人民法院(2024)京行終1364号行政判決。
※本稿は『中華商標雑誌』掲載記事に基づく。
編集・翻訳者情報
担当:IP FORWARD法律特許事務所
中国商標代理人 戴 元


