中国競合他社に対する商務調査
近年、中国企業は急速な技術進化と研究開発投資の拡大を背景に、すでに「模倣大国」から「知財大国」へと転換を果たしつつあります。EV、AI、ロボティクス、生活家電など多くの分野において中国企業が日本企業の有力競合となり、過去には模倣業者として認識されていた企業が、OEM 生産や自社ブランド展開を経て、現在では国際市場で存在感を示すケースも珍しくありません。
こうした状況下、特許権やその他知財権の観点から中国企業をどのように位置づけるか、あるいは M&A や協業の対象として評価すべきか、企業の事業部門と知財部門が連携し、新たな視点で検討を進める場面が増えています。
その過程で、対象企業の実態を把握するための商務調査(企業調査)に関するご依頼が急増しており、弊方でも多様なニーズに対応させていただいております。弊方は10年以上にわたり模倣業者調査に携わってきましたが、そのノウハウは一般企業を対象とした調査にも応用可能であり、本稿では商務調査の実態および弊方のサービス概要をご紹介します。
◆ 商務調査の目的
商務調査の目的は多岐にわたります。近年では、
・「特定業界を分析する中で主要中国企業の現状を把握したい」
・「競合として注目される企業の実態や技術力を評価したい」
・「競合企業の知財戦略や運営実務を知りたい」
といったニーズが増加しています。
◆ 商務調査を通じて取得できる情報
模倣業者調査では主に模倣品の製造・流通実態を把握しますが、商務調査では対象企業の事業運営全般を幅広く取得します。調査項目の一例は以下のとおりです。
なお、すべての情報が必ずしも一定の精度で取得できるわけではないため、事前に調査会社と「どの項目がどの程度取得可能か」「取得できなかった場合の費用はどうするか」を明確化することが極めて重要です。
弊方では、依頼段階でクライアント様が特に把握したい情報をヒアリングしたうえで、項目ごとの取得可能性や難易度を提示し、双方合意後に調査を開始するプロセスを徹底しております。
図:商務調査で入手可能な情報例

◆ 商務調査の手法
<デスク調査>
・当局からの基本情報・財務情報の取得
・インターネットおよび公開情報収集
・業界団体・関連企業へのヒアリング
・「企査査」「天眼査」等の信用情報プラットフォームを活用した裏付け
もっとも、中国では依然として公開情報が限定的であり、虚偽情報も散見されるため、デスク調査のみで十分な検証を行うことは困難です。そのため、次の訪問調査が極めて重要になります。
<訪問調査>
調査員による現地調査(目視・ヒアリング)
模倣業者調査で培った現場調査ノウハウを生かし、敷地規模、従業員数、生産・出荷状況、車両の出入り、工場・設備の実態などを現場で確認します。また、必要に応じて適切な身分設定のもと、対象企業と接触し、営業担当者や生産現場の関係者へのヒアリングを通じて、販売力・生産力・サービス能力等の情報を把握します。
<ヒアリング調査>
対象企業が大企業または専門性の高い技術領域である場合には、「キーマンヒアリング」、「複数情報源の矛盾検証」、「業界動向との照合」などを、専門コンサルタントが分析します。調査会社を選定する際は、この体制を有しているかが重要な判断基準となります。
◆ 総括
中国では必要情報の取得難度が依然として高いものの、多くの日本企業にとって中国市場の重要性は増す一方であり、競合企業や提携候補企業の実態を正確に把握する重要性は年々高まっています。
特に近年は、中国企業が研究開発力と知財ポートフォリオを急速に強化し、国際市場でも攻勢を強めています。知財部門にとっても、競合となる中国企業の知財戦略や技術力を把握しておくことは、侵害リスク管理のみならず、自社の強みの再評価、協業・M&A の意思決定にも直結します。
弊方の商務調査サービスは、知財部門のみならず、経営企画部門、海外事業部門、弁護士事務所の M&A デューデリジェンスなど幅広い場面でご活用いただいております。ご関心がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
以上
担当:IP FORWARD
中国ビジネスコンサルティング部

