コラム

提訴から7年 – 日立金属事件第一審判決

2021年4月23日、日本の日立金属に対して、独占禁止法違反を理由に、490万元(2021年5月のレートで約8,330万円)の賠償金の支払いを命じる判決が寧波市中級人民法院から出されました。


概要

 本件は、レアアース・永久磁石産業技術創新戦略連盟の構成企業である寧波科田磁業有限公司が、 日立金属に対して、ネオジム焼結磁石特許をライセンスしないことを理由に独占禁止法違反(市場支配的地位の濫用)を主張して、2014年に損害賠償請求訴訟を提起した事案ですが、2015年、2017年に開廷審理が行われた後、2021年4月に至るまで専門家意見等が補充され、提訴から判決まで、約7年の歳月を要しました。


判決内容

 判決の内容は、日立金属に対して、取引拒絶(不許諾)の停止と、490万元の賠償金の支払いを命じるものです。 本件で問題となった特許は標準必須特許ではありませんが、原告は、製造工程における「事実上の標準」と主張しており、裁判所は、これを「必需特許」として、被告が、かかるネオジム焼結磁石の必需特許のライセンス関連市場における市場支配的地位を有すると認定した上で、被告が、原告とのライセンス交渉において、原告に対して、原告の技術情報、営業秘密を含む大量の生産技術情報を要求したこと、原告がこれに応える姿勢を示していたにもかかわらず、被告は合理的期間内にライセンスする旨の意見や具体的な価格の提示もしなかったことなどを挙げ、被告の行為が、市場支配的地位を濫用した「取引拒絶」に該当すると判断しています。

 本件は、第一審の判決であり、上訴されれば、最高人民法院の知識産権法廷で審理されることになりますので、今後の動向に引き続き注目が集まります。


※本判決のより詳細な情報は、弊所のニュースレター2021年5月号でご紹介しております。ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡ください。


著者情報

IP FORWARD法律特許事務所

日本国弁護士

本橋 たえ子​​​​​​​

本橋たえ子 / Taeko Motohashi

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