コラム

中国における氏名に関する商標冒認事案紹介


 最近、中国上海では、コロナウイルスの影響でロックダウンを余儀なくされている。今回はこの背景の中における商標権の冒認登録紛争事案について解説したいと思う。

 中華圏の芸能人である劉畊宏は、インターネットで脂肪燃焼エクササイズのライブ中継を行い、自宅でのフィットネスが徐々に流行になってきている。現在、劉氏はSNSドウイン(中国版TikTok)で6,600万人のフォロワーを抱えている。この人気を狙って、「劉畊宏」「劉畊宏女孩」「劉畊宏男孩」などを無断で商標登録しようと狙っている人たちもいる。中国商標局の検索サイトで調べた結果、現時点で「劉畊宏」に関連する冒認商標は既に合計39件ほど存在し、様々な区分に及んでいる。

 「エクササイズ」分野で超人気で有名な公衆人物である劉畊宏の名前自体には大きな商品価値とビジネス価値があり、それを登録できていれば多くの利益を得るのであろう。しかし、商標出願は誠実と信用の原則に従うべきであり、公序良俗に反し、不当な利益を求め、商標登録の秩序を乱すという典型的な違法行為は、官庁より当然許せない行為でもある。

 商標法によれば、氏名が冒認されるとき、少なくとも二つの救済方法がある。一つ目は、氏名の使用権、つまり、氏名の使用を許諾する権利は、劉畊宏本人に帰属するものである。したがって、劉畊宏自身が商標異議申立や無効審判の手続きを講じ、国家知的財産権局に冒認商標の却下を求めることができる。二つ目は、商標出願審査の中で、国家知識産権局の審査官は、商標法の関連規定に基づき、出願の悪意で商標出願を拒絶することができる。

 2019年に「中華人民共和国商標法」が改正され、第4条「使用を目的としていない悪意商標出願を拒絶する」という規定が追加された。このように、国家知識産権局は「悪質な商標出願」へ対抗する際、法的根拠が強化されたのである。

 なお、本件のように、2021年8月以降、国家知識産権局は、「社会主義道徳や慣習に不利影響がある」と規定する商標法第10条に基づき、「全红婵」、「谷爱凌」などの知名スポーツ選手名に関する1,300件以上の商標出願を拒絶した。


出典:法制網(www.legaldaily.com.cn)

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