コラム

中国における EC 起点型模倣品摘発の実務 ― 実際の刑事摘発事例から見る対応設計のポイント ―

はじめに

近年、中国における模倣品流通は、従来の卸売市場や実店舗から、ECプラットフォームを中心とした構造へと大きく移行している。特にタオバオや拼多多(PDD)等のプラットフォームでは、複数店舗を通じた分散型販売や短期間での出品・削除が繰り返されるため、従来型の単一業者摘発では十分な効果が得られないケースが増えている。このような環境下では、単に模倣品を削除するだけでなく、流通構造そのものを捉えた対策設計が求められる。本稿では、最近実施された刑事摘発実例をベースに、EC時代における模倣品対策の実務構造と、その設計上のポイントを整理する。

案件概要

A社(日系消費財メーカー)において、ECプラットフォーム上で模倣品が確認された。複数の販売店舗が関与している可能性があり、案件規模も非常に大きいと認められたため、権利者は詳しい実態調査を経ず、早期に公安当局へ申立を行った。その後、公安当局はプラットフォームと連携し、関連性のある店舗の抽出や販売数値等の確認を行い、サンプル購入を通じて証拠を収集した。その結果、販売業者と供給業者の複数グループが特定され、段階的に摘発が実施された。

また、摘発過程では、関係者の供述をもとに新たな関係者が判明し、追加摘発も行われた。現場では、模倣品の在庫に加え、ラベル、資材、出荷管理用のパソコン等が確認され、販売のみならず、簡易的な加工・組立を伴う業態であることが判明した。摘発の結果としては、1,500点以上の模倣品に加え、模倣品ラベルや生産設備も押収されて、合計で7人の容疑者が連行された

本件の実務的特徴

本件は、従来型の模倣品摘発と比較して、以下の点に特徴がある。

・  ECを起点とした摘発設計である。本件では、EC上における模倣品を単なる削除対応にとどめず、刑事摘発までを前提とした対応が初期段階から設計されている。ECは対策の終点ではなく、証拠収集と摘発の入口として機能している。

・  プラットフォームのデータを活用した店舗分析である。公安当局はプラットフォームと連携し、複数店舗の関係性や販売パターンを分析することで、単一店舗ではなく背後の供給構造の把握を行っている。これにより、個別対応ではなくネットワーク単位での摘発が可能となっている。

・  販売と供給の分離である。本件では、販売業者と供給業者が明確に切り分けられ、上流の供給業者も特定して摘発された。現場においてはラベルや資材も確認されており、単なる転売ではなく加工機能を含む業態が明らかとなった。

図1 摘発現場(供給業者)における押収作業の様子

・  供述を起点とした横展開である。摘発時に得られた供述をもとに、新たな関係者(販売業者)が特定され、追加的な摘発が実施された。これにより、一つの摘発が複数案件へと展開する構造となっている。

図2 供給業者のパソコンを通じて新たな関係者を特定する様子

図3 摘発現場(販売業者)における押収作業の様子

本件から、日本企業の模倣品対策において参考となる点はいくつか存在する。

・  ECプラットフォーム上の模倣品について、特に悪質な業者は、削除対応のみでは十分ではなく、摘発をはじめとした更なる対策が必要である。販売履歴や物流情報といったデータは、摘発において重要な役割を果たす。

・  公安当局との連携を前提とした摘発設計が重要である。プラットフォームデータの分析や上流業者の特定は、調査会社や行政当局による摘発では限界があり、公安の捜査・摘発の公権力が不可欠となる。

・  模倣品問題は個別業者の問題ではなく、複数業者が関与するネットワーク構造として捉える必要がある。そのため、対策も単発ではなく、構造的に設計することが求められる。

おわりに

中国における模倣品対策は、EC化の進展に伴い、その手法が大きく変化している。本件のように、プラットフォーム連携、上流特定、供述を活用した横展開を組み合わせた対応は、今後の実務において重要性を増すと考えられる。

IP FORWARDグループでは、こうしたEC起点型の模倣品対策について、プラットフォーム分析、証拠設計、公安申立、摘発支援、上流特定まで一貫した対応を行っている。個別案件の対応に加え、模倣品流通構造の分析や対策設計についても対応可能であるため、ご関心があればぜひご相談いただきたい。

以上

執筆者

IP FORWARD オフライン模倣対策部
日系企業を対象に、中国国内のECプラットフォームにおけるデータ分析から証拠保全、現地公安当局との連携・申立、現地摘発支援、供給ルートの上流特定・横展開まで、実効性の高い模倣品排除ソリューションを一貫して提供している。

https://www.ip-fw.com/3160809

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