コラム

作品名及びキャラクター名が『商標法』第三十二条にいう「先行権利」を構成するかに関する司法認定

要旨:商標の権利認定に関する紛争事件において、作品名及びキャラクター名が高い知名度を有することにより発生された民事上の権益については、権利者は『商標法』第三十二条に定める「先行権利」の規定を根拠として、他人による商標登録を阻止することができる。その理由は、作品名及びキャラクター名を民事上の権益として保護することが、知的財産権保護の本旨に合致するのみならず、信義誠実の原則を尊重し、商標登録管理秩序を維持するという商標法の立法目的にも適合するからである。もっとも、当該保護の可否を判断するにあたっては、以下の要素を総合的に考慮する必要がある。

第一に、係争商標の出願日以前において、当該作品が著作権の保護期間内にあったか否か。

第二に、係争商標の出願日前において、当該作品名及びキャラクター名が高い知名度を有していたか否か。

第三に、作品名及びキャラクター名を商標として関連商品又は役務に使用した場合、当該使用が、当該役務等が権利者の許諾を受けたものである、又は権利者との間に特定の関係が存在するとの誤認があるか否か

一 事案の概要

2016421日、李某は、第19720063号「小猪佩奇」商標(以下「係争商標」という)について、第43類「レストラン、飲食店、食堂、ファストフード店、カフェ」等の役務を指定して登録出願を行い、当該商標権の存続期間は202766日までである。

娱乐壹イギリス会社(以下「娱乐壹社」という)は、2019524日、その係争商標について国家知識産権局に対し無効宣告請求を行った。国家知識産権局は、2020623日、商評字〔2020〕第169414号の裁定(以下「本件裁定」という)をもって、当該無効宣告請求に関する判断を下した。

本件裁定は、「小猪佩奇」がアニメ作品の名称及び作品中のキャラクター名として、既に関連公衆に広く認識され、一定の知名度を有していること、係争商標の登録が、役務の出所について混同・誤認を生じさせ、娱乐壹社が『小猪佩奇(Peppa Pig)』アニメ作品及びそのキャラクター名に基づき有する合法的権益を侵害するものであり、『商標法』第三十二条にいう「他人の既存の先行権利を害する」場合に該当すると認定した。これにより、国家知識産権局は係争商標を無効とする旨裁定した。

李某は、本件裁定を不服し、法定期間内に北京知的財産裁判所へ提訴した。

二 裁判の判断

北京知的財産裁判所は審理の結果、次のとおり判断した。

『小猪佩奇(Peppa Pig)』アニメ作品は、2004年に娱乐壹社の所在国において初放送され、20156月に中国国内に導入され、20185月まで中央電視台子供向けチャンネルにおいて継続的に放映された。また、当該作品は、中国市場において、優酷、愛奇芸、楽視、騰訊視頻等の複数の動画配信プラットフォームを通じて、長期間かつ継続的にオンデマンド配信され、視聴回数は極めて多い。さらに、新聞、雑誌、ウェブサイト等の各種メディアにおいても、当該アニメ作品に関する大量の宣伝・報道が行われていた。

したがって、係争商標の出願日前において、「小猪佩奇」は、作品名及び作品におけるキャラクター名として高い知名度を有し、中国の関連公衆に広く認識されていたことがわかる。

また、娱乐壹社の授権許可を受けた書籍、玩具、ゲーム等の派生商品が、中国国内において長期間かつ継続的に販売されていたことから、「小猪佩奇」は、当該アニメ作品及びキャラクターイメージとの間に安定した対応関係を形成されたことがわかった。

係争商標「小猪佩奇」は、娱乐壹社の作品名及びキャラクター名と文字構成において完全に一致している。さらに、係争商標の指定役務である「レストラン、自助式レストラン、飲食店」等は、人気アニメ作品において通常想定され得る派生的役務に該当する。

提出された証拠によれば、李某は実際に「小猪佩奇」アニメをテーマとする飲食店を開設しており、かつ当該作品中のキャラクター名及びキャラクターイメージを中心として複数の商標登録出願を行っていたことが認められ、その主観的意図として、ただ乗りの意思が明白である。

このような事情を総合すれば、係争商標を指定役務に使用することは、当該役務が娱乐壹社の許諾を受けたものである、又は同社との間に特定の関係が存在するとの誤認を需要者に生じさせる可能性おそれがある。したがって、係争商標の出願・登録は、娱乐壹社が「小猪佩奇」の作品名及びキャラクター名について有する先行権益を侵害するものであり、『商標法』第三十二条に違反するものとする。

北京知的財産裁判所は、一審判決として、李某の訴訟請求を棄却した[1]。

李某はこれを不服として北京市高級人民法院に上訴したが、同法院は二審判決において、上訴を棄却し、原判決を維持した[2]。

参考文献

1]北京知的財産裁判所(2020)京73行初13227号行政判決

2]北京市高級人民法院(2022)京行終4921号行政判決

※本稿は『中華商標雑誌』掲載記事に基づく。

https://mp.weixin.qq.com/s/vo0Z7wTxycedkNY__02iew

編集・翻訳者情報
担当:IP FORWARD法律特許事務所

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