コラム

中国商標出願における商品の選び方の豆知識

 中国「商標法」の関連規定によれば、登録商標の専用権は、登録を認めされた商標及びその指定使用された商品に限られています。よって、指定商品の選び方及びその名称の記載方法は、商標出願において、当該商標の保護範囲に直接影響を与えると言えるほど非常に重要な部分でもあります。
 
 上記を踏まえ、商標出願において、正確に商品を選ぶ方法、また商品選びによってリスクを回避する方法は出願人にとって非常に大切です。以下に、いくつかの商標出願の実例と結び付けて、中国における指定商品の選び方を紹介します。


はじめに:商品類似群の概念

 商標出願の際、出願人は、まず指定したい商品又は役務を選択することが必要です。言い換えれば、まずどのような商品に使用されているのかを確認しなければなりません。ただし、使用している商品の名称は、必ずも官庁に受け入れられる項目とは言えません。そこで、官庁より公表された「類似商品及び役務区分表」(以下は「区分表」という)に従い、適正な項目を選択する必要があります。
 
 なお、中国と日本は同じく、商品・役務は国際ニーズ分類表に従って分類されています。そのうち、第1~34類は商品の区分であり、第35~45類は役務です。「区分表」は大まかに、目次⇒各区分のタイトル(01~45類)⇒各類似群番号及び類似群の名称(4桁の数字で表記されています)⇒具体的な商品又は役務から構成されています。また、具体的な商品にも6桁の数字番号が付いていますが、商品名称からも商品選びができます。目次、区分のタイトル、類似群の名称により、指定商品又は役務の範囲を概ね、確定することができ、そこから、さらにその類似群に所属している具体的な商品又は役務から相応しい名称を見つけることが重要なポイントです。
 
例1:区分表の構成(例)

区分           

03         

洗濯用漂白剤及びそのほかの洗浄用商品;洗浄、艶出し、擦り磨き及び研磨用製剤;せっけん;香料;芳香油;化粧品;洗髪用液;歯磨き

類似群名称

0306

化粧品(動物用化粧品を除く)

具体的な商品

030018

ルージュ


 よって、もし出願者の主な分野がコスメティックスの場合、まずは指定商品の範囲を第3類化粧品の0301、0306類似群に選定します。また、出願人は、商標登録出願において、具体的な商品、または役務を記入する必要があるので、区分のタイトルや類似群のタイトルをそのまま記入することはできません。そのため、第3類の類似群を絞ったあとに、具体的な商品項目(たとえばルージュ、スキンケア用クリームなど)を指定することが必要です。


商品・役務の類似関係

 簡単的にまとめますと、中国の「区分表」の関連規定によれば、類似群番号(4桁)の数字が同じであれば、概ね、「類似商品」に該当します。区分が異なる場合には、当然、類似商品に該当する可能性が非常に低いですが、同じ区分(類)であっても、類似群(4桁コード)が異なりますと、類似商品に該当しない可能性もあります。
 
例2:類似商品・非類似商品(例)

類似商品

0501

ビタミン

0501

錠剤


非類似商品

1404

時計

1403

ジュエリー

 一方で、「区分表を超える類似関係」、すなわち、2つの商品の所属が同じ類似群ではなくても、特別な規定により類似している商品が存在しています。これらの商品につきましては、特に商品選定のとき、十分に注意をしなければなりませんので、一度、商標の専門家に商品確認しておくのが良いです。
 
例3:区分表を超える類似関係(例)

類似役務

3901

引越し

3505

企業の移転


例4:特別な非類似商品(例)

非類似商品
(サブクラスが違う場合)

1106(一)

乾燥設備

1106(二)

ドライヤー


非類似商品
(個別役務の場合)

4107

宝くじの発行

4107

アーティストのためのモデル紹介

※個別商品・役務は当該類似群の説明で注記されています。


非規範的項目の指定

 上記から分かるように、「区分表」に掲載されている官庁に受け入れられる項目をそのまま指定することを推奨しています。ただし、どうしてもこの記載で出願したいという場合には、非規範的項目を指定することもできます。
 
 このような、商標出願の審査において、担当審査官が、同商品名称又は役務項目の指定が明確で、且つ容易に「区分表」の対応する類似群に分類することができると判断した場合、順調に受け入れられる可能性がありますが、審査官が商品の特徴・分類が不明確であると判断した場合には、「補正通知書」が下されます。
 
 この補正に関して応答しない場合は、出願却下となりますので、慎重に対応する必要があります。たとえば、補正段階において、出願人は、当該商品の説明資料や写真などを提出することで、当該名称が受け入れられるようなったり、またはほかの名称に変えることができます。ただし、補正の機会が1回のみで、修正された内容が相変わらず受け入れられないのであれば、やはり商標却下となります。このとき、再度出願することとなりますので、あらかじめご留意ください。
 
 なお、出願時に、「区分表」に未記入の商品又は役務名称に関わる説明資料を、出願書類とともに提出することもできます。但し、実務において、出願書類以外のその他の説明資料が参考されるかどうかは審査官次第であり、現在の審査スピードを考えれば、むしろ参考しない可能性が高いと思われます。
 
 したがって、「区分表」に未記載の商品又は役務名称について、時間とコストがかかっても一回の補正を試したいのであれば良いですが、、受け入れられない可能性を考え、区分表に沿って商品選びを講じるのが無難です。
 
 また、規定的な項目を指定するときの注意点については、下記にて具体的にご紹介します。

事例1:指定商品の範囲が広い場合、所属区分を分けて出願する必要がある

・「雑貨」を指定したい場合
 
 日本のコンテンツ企業またはインテリア企業については、商品を考案するときに、「雑貨」という表記ははよく見受けられます。ただし、「雑貨」に含まれる内容はさまざまであり、商品の品質・特徴も異なりますので、それぞれの区分があります。よって、この場合、分類・商品を絞って出願する必要があります。
 
例5:「雑貨」の指定商品例(例)


「雑貨」の指定商品例

0921

サングラス

1403

ジュエリー

1605

ノート

1802

カバン

2101

キッチン用具

2501

服装

2601

リボン

2802

おもちゃ

 また、たとえば「手袋」のような日常でよく見られる商品ですが、実は効能・用途に従って異なる区分に分けられています。商品を選定するときには、自社商品の効能・用途から最も適している商品・区分を指定すべきです。
 
・「手袋」を指定したい場合
 
例6:「手袋」の指定商品例(例)

「手袋」の指定商品例

0919

安全保護用手袋

2510

手袋(服装)

2809

ゴルフ用手袋


事例2:範囲の広い規範項目を選ぶ

 「区分表」に記載された具体的な商品名称は、日常生活や工業生産の中で誕生した名称がそのまま使用されることが多いので、両者の概念と範囲はほぼ同じであるのが一般的です。例えば、第3類においてはせっけん、シャンプー、化粧水などがあり、第30類にはパン、ギョーザ、ピサなどが挙げられます。但し、「区分表」に記載された具体的な商品名称の中では、実は一部の商品においては、範囲の広い「上位概念」の商品名称も存在しています。下記では、ファッション業界をよく指定する第18、25類を例として説明します。
 
・ファッション関連商品を指定したい場合
 
例7:「ファッション」の指定商品例

「ファッション」の指定商品例

1802

カバン

1802

財布

1802

ハンドバッグ

1802

リュックサック

2501

服装

2501

シャツ

2502

下着

2504

レインコートゃ

 例えば、上記フォームから分かるように、黄色いで表記された「カバン」と「服装」は、明らかに商品範囲がほかの商品と比べて広くなり、指定すると、比較的に広い権利範囲を獲得できると思われます。
 
 また、中国の商標制度では、1商標1区分において10個以内に商品又は役務を指定する場合、官庁に納付する実費が同じですが、第11個からは追加商品個数により追加料金が発生します。よって、このような権利範囲の広い商品を指定することで、指定商品枠をほかの必要な商品に回すこともメリットがあります。

事例3:範囲の広い規範項目・実際使用の商品とのバランス

 前述のように、「区分表」に記載された具体的な商品項目のうち、「カバン類」、「服装」など、一部には上位概念に近い規範的な商品名称があります。それらの商品の指定に伴い、カバーされている範囲が広くなり、日常的にもファッションにかかわる多くのカバン・服装が含まれています。また、このような商品を指定すれば、出願人の商品を広範に保護できるだけではなく、コスト面において節約することも重大なメリットの1つとも言えます。
 
 それとは対照的に、このような広い商品のうち、「服装」のように、2501~2505という。多くの類似群を跨いで類似関係が非常に広い商品もあります。よって、もし2502~2505類似群にほか他社類似商標が存在し、「服装」における登録ができなくなる場合、2501のほかの日常服装類における権利もなくなります。このような事態を避けるために、当該上位概念と下位概念の商品を組み合わせ、一緒に出願することが考えられます。例えば、2501類似群にもう1つの商品「スーツ」または「シャツ」を指定します、これらの2個の商品を同時に指定するのが比較的ベストです。
もし商標登録後、出願人自身が商標を使用するのみならず、他人に商標使用許諾の契約を講じて商標の使用をほかの主体に許可するとき、あらかじめ具体的な商品を指定すると、具体的な許諾商品のみに使用許諾を出すことが可能であり、商標使用許諾・使用許諾契約届出などの手続きを講じるときには比較的便利です。

事例4:できるだけ商品・役務をカバーする防衛視点からの全類似群出願

 中国では、商標の出願料金が比較的に安く、冒認商標対応(異議・無効審判など)よりコストがそれほど高くないため、特にハウスマークや重要な商標を出願する際に、防衛の観点からみて、1~45類のすべての類似群をカバーするような出願方法もございます。それは「全区分商標出願」と言います。
 
 そのメリットとして、すべての区分において登録した分の他社後願類似商標を一斉に排除することができることで、実は比較的に効率的な手段です。ただし、出願時期が遅れていますと、すでに冒認商標がいくつかの区分で現れる可能性もありますので、やはり早いうちに出願を講じたほうがベストです。
 
 全区分出願と言いますとかなり費用が高いという先入観があるかもしれませんが、実は、10件の商標異議案件のコストより安く、またボリュームディスカウント後にさらに安くなる可能性があります。日本の大手企業はもちろん、ほかの外国の企業、中国の大手・中間企業も多く全区分出願を講じています。また、最近ではコンテンツの内容を保護するため、コンテンツ関連の名称に関しても全区分出願を講じた企業もあります。
 
 よって、中国の冒認対策の先手を打つためには、まず全区分または一部冒認されやすい区分において出願してみるのが比較的に経済的で便利です。ただし、区分・類似群をどのようにカバーしたらいいのかなどの具体的な話は、一度現地代理人と打ち合わせたうえで実行することがおすすめです。

おわりに

 上記を踏まえると、商標出願において、正確に商品を選ぶ方法、また商品選びによってリスクを回避できる方法は出願人にとって非常に大切です。まずは自社の商品の所属区分を確定してから、具体的な商品選びはやはり現地の商標代理人の意見を参考し、補正などを避けてスムーズに審査段階に入るのがベストです。また、商品の選定についての豆知識を少し把握していれば、無駄な出願費用などを節約し、より効率的な出願方法を選定して出願するケースが増えることを期待しています。


著者情報
IP FORWARD China
中国商標代理人
戴 元

戴 元/Dai Yuan


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